マルコ・アウレリオ・メロ判事の定年退官

少し前のことだけど、ブラジル連邦最高裁判所のマルコ・アウレリオ・メロ判事が定年退官した。ブラジルでは最高裁の審理がテレビで放送されている。その放送局TV Justiça(裁判所テレビ)は、多くの反対の中、最高裁長官だったメロ判事が2002年に創設した。カルドーゾ大統領の出張中にブラジル憲法の規定によって大統領権限を代行することになったメロ判事は、大統領に代わってTV Justiça を創設する法案を自ら裁可した(2002年5月17日付法律第10461号)。審理がテレビで放送されるようになって、それまで誰にも知られていなかった最高裁判事たちのことを、多くの国民が知るようになった。日本の裁判官同様外での発言を控えていた判事たちも、公の場で発言するようになった。ブラジルの裁判所は評議を公開している。評議の際の各判事の意見がテレビで放送され、国中で論評されるようになって、評議の内容も充実した。テレビが導入される前は各判事がその日に議論したい事件を評議の時間に持ち寄っていて、あらかじめ何が議論されるのか知ることはできなかった。今では評議の日程が定められ、判事たちは事前に準備した上で評議に臨んでいる。メロ判事が最高裁の裁判官に就任したのは1990年のことで、最高裁判事の定年である75歳になった今年の7月まで実に30年以上も最高裁判事を務めた。ブラジルでは11人の最高裁判事の多くが40代から50代で最高裁判事に指名され、定年に達するまで終身の身分保障のもと20年から30年に渡って職務を果たす。テレビ中継と相まって、個々の最高裁判事の仕事が見えやすいのはブラジルの制度の良いところだと思う。

Yasuyuki Nagai
Advogado japonês em Nagoya